去る4月25日に、寺院経営研究会4月度例会が、テレビ会議システムZoomを使用して、15か寺の住職様にお集まりいただき、オンライン開催されました。
今回は「寺院のマーケティング」をテーマに、人口1万人のエリアで年間200件成約の実績がある樹木葬「天空陵」を運営する、金剛宝寺住職の井上仁勝様にゲスト講師としてご登壇いただきました。
金剛宝寺様は、
・人口1万人の地域で年間500件の問い合わせ、年間200件の成約がある樹木葬「天空陵」を運営
・立地の悪さを利用して、他の樹木葬にはない特色を付け、差別化に成功
という点で、全国的にも類を見ない経営を実践されております。
今回のレポートでは、金剛宝寺様の実績を作った取り組みのポイントについて、講座講演録をまとめてお伝えいたします。
金剛宝寺様は、昭和53年と比較的新しいお寺です。立地としては熊本県と大分県の県境の、山の奥深くにあり、最寄駅からは車で1時間、県をまたいだ2つの町の人口を足し合わせてもやっと1万人前後という場所にあります。
また、従来門徒(檀家)様にお守りいただくお寺というよりも、ご祈願(特に縁結び)を中心としたお寺であったため、いわゆる門徒様が少ない中で、細々と運営をされているお寺様で、何かあれば門徒様にご寄付を募るという形をとっておりました。
そのため、井上仁勝様が住職を継職される頃には、門徒さんの高齢化・減少はもとより、現金不足や多額の借金を抱えた状態で、さらに寄付を沢山募り続けた結果役員との意見対立も生じるなど、再建を進めようにもにっちもさっちもいかない状態になりかけていたそうです。
そのような中、井上様が30歳の時に住職を継職し、再建に着手し始め、今では年間500件の問い合わせ、年間200件の成約がある樹木葬「天空陵」を作り、運営を続けられております。
再建をする中でも紆余曲折あり、「借金返済や現状のお寺の運営を賄うための現金を確保すること」がスタートでした。
そのような中で、役員の知り合いつてで民間のコンサルとのお付き合いを始め、お寺の再建の助言を貰い、その後石材店との提携が始まり、樹木葬「天空陵」を造設し、霊園の販売事業を「法人に付属する子会社」が経営する形でスタートしました。
金剛宝寺様では、先述の再建に至るまでに、「お寺・お墓の運営方針」を定めております。具体的には「収入の急拡大をせずに人員と設備を増やし過ぎない。地域に長く愛され続けられる尖ったお寺」となることを目指すとされておりました。
このコンセプトが、金剛宝寺様の再建のキーポイントとなります。
具体的には3つのポイントにまとめられます。
1、地域住民が求める供養の課題解決をどこよりも早く実践する
2、良い供養の課題解決モデルを広告の力で拡散する
3、ご契約者との関係構築による満足度向上で紹介を生み続ける
これらのポイントをもう少しご紹介いたします。
金剛宝寺様は、地域でも先駆けて樹木葬を造設したことにより、先行者メリットを大きく受け取ることに成功しております。
当時あった供養の問題として、
・永代供養がなく、管理を家族間で継続して続けないといけない負担感
・家族のお墓に入りたくない事情がある方の選択肢がない
・新しくお墓を作ろうにも、高額で購入することをためらってしまう
・お寺とのお付き合いをすると、なにかと寄付を要請される(※金剛宝寺様が今の経営に変わるまでは、この問題を抱えており、事実金剛宝寺様の門徒減少の原因の一つでもありました)
といったことがありました。
上記の問題解決ができる商品づくりを、どこよりも早く作って提案することにチャレンジされました。その結果、樹木葬に投資した金額は1年と経たずに回収に成功されております。
もちろん、ただ「商品を作る」だけでなく、「商品を多くの人に知ってもらう」ために、広告を実施、お寺とお墓を認知する取り組みを実践されている結果でもあります。
金剛宝寺様は、大都市まで距離が遠い立地ということもあり、造設当初は新聞の折込チラシを地域内に配信していたがほとんど反響がなく、次の一手が思い浮かばない、という状態でした。
そこで終わらず、どうやったら「遠方の人にも認知してもらえるか」という問題点を考え抜き、ウェブ広告とテレビや新聞などのメディア掲載の2つを利用することに決定されました。
この2つの広告を活用することで、樹木葬の問い合わせ数・成約数を飛躍的に拡大することに成功されております。
しかし、金剛宝寺様の先行者メリットは文字通り「先行者」であるため、あとから同じような商材を作って販売するところが増えてきます。特に近年、樹木葬は急増傾向にあり、競争が激化しております。金剛宝寺様でも、広告を続けている中で、明らかに成果が伸び悩んだ時期がありました。
そこで、改めて金剛宝寺様の樹木葬「天空陵」の、他の競合との違いを調査し、「地域住民が求める供養の課題」と照らし合わせて、他にはない強みを打ち出すことで、成果は過去最高を更新、年間500件の問い合わせ、年間200件の成約の実績を2021年に達成されております。
金剛宝寺様は、先述の通り、もともとは門徒様も少なく、資本も小さなお寺様でした。
そのため、例えば大規模な霊園運営をしているお寺様や葬儀社・石材店などと比べても、造設する規模や広告などに使えるお金が大きくありませんでした。
そのような状況で金剛宝寺様が選んだ道は「お寺がやる樹木葬ならではの、他ではできない価値の提供」でした。
具体的には、
・樹木葬契約者には、必ずご葬儀についてヒアリングし、何か課題があれば自坊での葬儀をご提案する
・電話対応が多いため、顧客管理システム(CRM)と電話してきたお客様の情報管理(CTI)を駆使し、他にはない適切で丁寧な顧客対応(※「以前もその質問しませんでしたか?」のような話が減り、お客様にとっても不愉快なタイミングが減ったそうです)
・永代供養の合同法要は毎年4回開催し、来場・ライブ配信を実施
・客殿を、40名までの葬儀に対応できるようリフォーム、遠方から来た方も居心地の良い空間へ
と、他にはない価値を考え、提供し続けておられます。
これらの取り組みにより、ご契約者様の満足度が向上、ご契約者様からの紹介件数が増え続けております。
これら3つのポイントを実践し、金剛宝寺様の再建から成果を出し続けていく、「地域に長く愛され続けられる尖ったお寺」になっておられます。
寺院経営研究会の4月例会にて、金剛宝寺住職、井上仁勝様のゲスト講座のダイジェストレポートをお届けいたしました。
次回は、寺院経営研究会の4月例会の第2講座「寺院経営の最新事例講座」の講座レポートをお届けいたします。
https://www.funaisoken.co.jp/form/study?contact_number=067424
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